第二章 ひろむ



彼女が迎えにきていた。
すぐ其処で手を振って、俺にそっと微笑んだ、そんな彼女に手を振って、俺はさくらに言った。
「それじゃあ、これからデートだからまた後で」
また戻ってくるつもりだった。
さくらはいつだって此処で歌っている。
歌だけが自分の全てだって言うように、声を張り上げて歌っている。
ガキ共かおばさんしか見てないけど、それでもさくらは歌をやめない。
さくらは俺の唯一の友達だ。
大事な大事な親友だから、どんな事があったって、必ず此処に戻って来て、一緒にギターを弾く。
どんな事があったって会わない日が無いくらい、
いつだってさくらと一緒に居たから、居なかったら調子が狂うってのもあるんだけど。
彼女、名前はめぐみって言うんだけど、俺はめぐって呼んでる。
俺にはさくら以外の友達がはっきり言っていない。
話し掛けてもらって嬉しかったけど、告白された時にはどうして良いか分からなくなった。
つい、俺もとか言っちゃって一緒にいるけど、小さい時からずっと俺はさくらが好きだった。
まあ、さくらには嫌われてる気もしたし、あきらめたんだけど。
めぐは俺に言った。
「ねぇ、どうしていつもあの子と居るの?」
「さくらの事? 親友だから♪」
めぐは少し悲しそうだった。
怒ってるのかもしれない。
でも、俺には楽譜とギター以外の事が良く分からないからなぁ。
人の顔色を伺うのが苦手なんだよ。
さくらは分かりやすいから努力しなくてもなんとなく分かるんだけど。
大事なギターを抱えて、俺はめぐをじっと見つめていた。
「ギターと私、どっちが大切なの?」
この場合、めぐって言わなくちゃ、俺って駄目なヤツだよなぁ? 
やっぱり、命よりも大事なギターの方が大事なんですけど、と思いつつ、俺は
「めぐ」
っと言った。
嘘は苦手なのになぁと思いつつ、めぐの目を見つめた。
 ああ〜兄ちゃん、新曲作るって気合い入れてたけど大丈夫かな? 
とどうだって良い事を考えてしまう自分がどれだけギター馬鹿なのか、ちゃんと分かってる。
誰も俺の話にはついて来られないって事は分かってるつもり。
少なくとも、さくらはついてくいるけど。
「それなら、彼女と歌うのやめて」
めぐは真剣な顔で俺にそう言った。
怒ってる。
どう見たって怒ってる。
新曲の心配してる場合なんかじゃない。
「え?」
「彼女が好きなら好きって言ってよ。私よりもギターが好きならはっきりしてよ」
めぐはそれだけ言って駆け出した。俺はギターを抱きかかえるとその後ろ追いかけた。
「めぐ〜!」
 俺がギターしか能のない運動音痴と知っての嫌がらせか、めぐは止まってくれなかった。
俺は仕方がないから立ちどまった。
重いギターを下ろして、切れた息を整えようとしたけど駄目だった。
早くもダウンしそうになってる自分がはっきり言って、もどかしい意外の何でもない。
次に顔をあげて道の先を見た時、もうめぐの姿は何処にも無かった。








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