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スカイブルーのトレジャーハンター番外編
オレンジ頭巾と病気の太陽
むかしむかし空色町にオレンジ頭巾というボクシングが得意な、ヘビメタロック野郎が住んでいました。彼はいつもメタリカをギターでかき鳴らして、一緒に暮らしている空兄に迷惑ばっかり掛けていましたとさ。
そんなある日、親友の太陽が大怪我をして寝込んでしまいました。何でも、ゴッドハンドを持つ天才外科医の泉が手術して、奇跡的に助かったそうです。それはそれは酷い怪我でしたが、泉のゴッドハンドのおかげで怪我はすぐに治ったそうですが、今度は疲れから熱を出してしまいました。
オレンジ頭巾は太陽のところにギターとりんごを抱えてお見舞いに行く事にしました。
病院はすぐ其処、自転車に乗る必要もないほど近くです。
ところが道端でお腹をすかせたサムという名前の狼に出くわしました。狼の癖に素手で戦えるほど強くないので、片手には銃を持っています。
狼サムは銃の天才で、離れたところにいる敵の拳銃を吹っ飛ばすという凄い特技を持っています。そして、自分以上に頭のいいヤツを見た事もないという凄い狼で、将来は弁護士になるというエリート街道を突っ走っています。
オレンジ頭巾は重そうにギターを抱えて
「俺になんか用か?」
と恐ろしい顔つきで尋ねました。
「そのりんごをくれないかな?」
オレンジ頭巾はギターを道端に下ろすと、拳を握って狼を殴りました。
「痛いよ、怪我したじゃん! 慰謝料よこせ!!」
狼は負けじと怒鳴ります。それはそれは凄い勢いでした。狼も生きる為に必死ですから。彼には飢えている妻の零がいるんです。
でも其処でオレンジ頭巾は思いつきました。そうだ、この狼を連れて行って、病気の太陽に美味しい狼鍋を作ってあげよう。そうすればきっとあのブラックホールみたいな胃袋の足しにはなるだろうし、太陽も元気になる筈だから。
という訳で、オレンジ頭巾は得意のボクシングで狼をぶちのめすと妻の零が心配そうに見守っているのも笑って(「人でなし〜!」と零は怒鳴りましたが)無視して、ギターと狼を抱えて病院に行きました。
病院では病気とは思えない太陽が寿司を食べている最中でした。物凄い数の皿が並んでいます。天才外科医の泉はぎょっとした顔をしてその光景を黙って見ています。
「おう、オレンジ頭巾!!」
ご機嫌の太陽は両手を振って笑います。その手が当たってお皿がじゃらじゃらと崩れてしまいましたが、太陽は気にも留めていません。
手土産に持ってきた狼を早速料理しようと、オレンジ頭巾の兄(オレンジ頭巾に迷惑ばかり掛けられているあの人です)空が肉切り包丁を持って病室に入ってきて、目をキラキラと輝かせます。
「何に料理しよう?」
「ステーキがいいなぁ♪」
「いや、やっぱりあっさりとした鍋だろ!」
「俺なんか食っても美味しくないぞ〜!!!」
狼は暴れてオレンジ頭巾の腕から逃げ出そうと必死ですが、逃げられません。ああ、俺はこんなところで食われて死んでしまうのかと狼サムは愛するの妻を思い出して涙を浮かべます。こんな事だったらもっと優しく愛してあげればよかったなぁと小さく後悔しています。
そして、空が包丁を振り上げた時でした、盗賊団”HELL”の御頭サタナエルが狼を奪って行きました。
此処で一番怒ったのはオレンジ頭巾ではなく、病気の太陽でした。点滴の針を引っこ抜き、猛スピードでサタナエルの後ろを追いかけます。
「待ちやがれ!! オレのステーキ返せ!!!」
どさくさに紛れて狼は逃げてしまいました。空色町の奥で仲良く愛する妻の零と木の実を食べて、幸せになったそうです。
ところが、サタナエルと病気の太陽は走り回り続けました。オレンジ頭巾は一時間ほどしてからサタナエルを殴り飛ばし、とても童話では描けないような目に遭わせてから鍋にしたそうです。
もちろん、料理したのは空ですよ。得意の腕をふるって美味しい美味しい狼鍋を作りました。それはまさにミシュランに十の☆で掲載されるほどの美味しさだったそうです。
そしてその鍋は泉と空と太陽とオレンジ頭巾の四人で美味しくいただきましたとさ。
めでたしめでたし。
おしまい☆
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